それから、夜になった。
茶の間ではにぎやかな声が響いている。

そんなとき外に車の止まる音がした。
僕はパパが迎えに来てしまったと思った。
また、あの暗い家に戻らなきゃいけないと思った。

また、怖くなった。

そんな僕とは裏腹に
明美ちゃんが明るい声で
『あ、明日香が帰ってきた』
と言いながら僕がいた玄関に出てきた。

僕はパパじゃないと分かった瞬間なぜかホッとしてしまった。

明美ちゃんは外の人に向かって
『明日香ちょっと開けないで。
待って待って』
とはしゃいでいた。
外に立つ女の人は
『何?お母さん。疲れてるんだから。
お父さんまたなんか変な物買ったんでしょ』
と呆れ気味に答えていた。

外に立つ女の人が戸を開けた。
疲れた表情の女の人の顔が一瞬で変わった。

『どうしたの?犬?
うわぁ。めっちゃ嬉しい。飼うの?
どうすんの?何でいんの?』
と明美ちゃんに質問しながら僕を抱きしめた。
明美ちゃんは
『お父さんが迷い犬連れてきちゃって』
と少し困ったように話した。

そんな困った様子におかまいなく明日香ちゃんは
『まじで?めっちゃかわいい。
お父さん最高じゃん』
とふざけたようにはしゃいでいた。


それが僕と明日香ちゃんの少し遅めの出会いだった。