結婚が決まったパパと女の人は
幸せそうだった。

それを見ている僕も幸せだった。

でも、あの女の人は結婚が近づいたある日
こんなことをパパに言い出した。
『前の奥さんがかわいがってた犬を私はかわいがれない。
絶対に一緒に住むのは嫌』

犬…
それは僕のことだった。
僕が犬だってことは知っていた。
ママが教えてくれたから。


僕はどうしたらいいのかわからなかった。
家の外には誰かがいかないと行けない。

3年前のことを思い出した。
檻の中にいる僕。
一人ぼっちで寂しかった僕。


何日かたったけど変わらない生活に
女の人が言った言葉は忘れかけていた。

ある日パパは僕に綱をつけて車に乗せてくれた。
パパの車に乗ったのはママが生きているとき以来だった。
ママが生きている時には
よく3人で出かけた。

公園だったり、海だったり。
遠くに行くときはいつも車で、
僕は車に乗るのが好きだった。

その日連れて行かれたのは1つの小さな家だった。
『誰の家だろう??』
そう思いながら中に入った。

家の中には何もなかった。
家具も、人も何もない家。

パパはそれから話し始めた。
『ボス、ごめんな。
パパな、あの女の人にたくさん助けられたんだ。
ママが死んだとき支えてくれたのがあの女の人だった。
これからはここに住んでくれ。
俺も出来る限り会いに来るから。
ホントにごめんな』

最初は理解出来なかった。
いや、理解しようとしなかったのかもしれない。
涙をながしているパパをみて
僕はやっと理解できた。

僕はここで一人で生活することになったんだ。