『ママ、入院することになった』

パパが帰ってくるなりそう言った。
『え?なんで?そんなに悪いの?』

聞きたいことはいっぱいあったけど、
パパはママの荷物を大急ぎでまとめてから、
すぐにまた出かけて行ってしまった。

それから、何時間たっただろう。
パパが帰ってきた。
帰ってくるなりパパは涙を流しながら
僕にこう話した
『ママな。具合が良くなかったんだ。
これからも、治らないだろうって。
入院しなきゃいけないほど
辛かったのに、俺たちのために我慢してたんだ。
もっと早く病院に連れていけば良かった』

それからもパパは泣き続けた。

次の日になるとパパはいつものように仕事に出かけた。
いつもと違うことは、パパの帰りが遅いこと。
そして、ママがいないこと…

僕は家で独りぼっちだったけど、
ママが良くなるまで我慢しなくちゃいけなかった。

パパは、帰りがどんなに遅くなっても
僕の散歩だけは欠かさなかった。

疲れた顔で帰ってくるパパに
『今日はお散歩しなくていいよ』
って何度も言ったけど、
パパはそれでも僕を外に連れて行ってくれた。