風が吹いた。

上空からの吹き降ろしの風。

私達はその風に、思わず視線を上向かせる。

…空は曇天。

太陽さえも覆い隠すほどの灰色の雲。

しかしその灰色の雲の中から、何かが現れ出でた。

曇天を突き抜け、白い煙と化した雲を身に纏いながら、その姿をゆっくりと現す。

…今までこの存在が、天空宮市のどこに潜んでいたのだろう。

それ程の体躯だった。

ただ『巨大』と一言で説明するには限界がある。

喩えるなら、その体躯が通過した瞬間、真下にある街は太陽の光を遮られ、一時的に夜の帳に包まれるといえばわかるだろうか。

分厚い曇り空の中から出現したのは、翼長、体長ともに100メートルはあろうかという、とてつもなく巨大な鳥だった。