見ている私やラビさんとしては、唖然愕然とするしかない。

ガルル君によって、ニーズヘッグが手玉にとられている。

あの獣の姿に変貌したガルル君の戦闘力は、馬鹿げているとしか言い様がなかった。

でたらめな強さだ。

彼の前では、神話の竜種ニーズヘッグの威厳も何もあったものじゃない。

許しを乞うように小さく嘶くニーズヘッグの姿は、まるで生まれたばかりの幼竜のようですらあった。

「……」

その様子を見て、ようやくガルル君が闘争心剥き出しの態度を軟化させる。

『千獣の樹海の魔物は無闇な殺し合いはしない』

その言葉通り、ガルル君は戦意を失ったニーズヘッグに、それ以上の攻撃を加えようとはしなかった。

怯えるように地に伏せるニーズヘッグに背を向けて、ガルル君は徐々に元の人間の姿へと戻っていく。

もう危険はないと判断したのだろう。

「終わった。学園、帰る」

彼は私やラビさんの顔を見て、いつもの屈託のない笑顔を見せた。

…直後。