天空険道そのものが揺れているのではないか。

それほどの地響きを立てて、ニーズヘッグが地面に倒れる。

魔獣の姿となったガルル君は四足歩行、前傾姿勢のまま、牙を剥いて唸り声を上げた。

獲物に襲い掛かる肉食獣そのものの姿。

しかしその獲物が、神話に語られる竜種ニーズヘッグとは…。

そのニーズヘッグは、巨体を重そうに起こしながら声を上げる。

咆哮ではない。

雄叫びではない。

その声には猛々しさも凶暴さも感じられない。

あるのは戸惑い。

何故このような小さな獣が、魔物の上位種たる竜種の自分を放り投げる事ができるのか。

そんな困惑混じりの声だった。