耳を疑う。

私、頭を強く打ちすぎて聴覚に変調を来たしたのかしら。

今ガルル君が、本気を出すとか何とか言ったような気がしたんだけど…。

聞き間違いに違いない。

だって、ガルル君の今の姿を見れば分かる。

ニーズヘッグの大顎に今にも噛み砕かれそうになり、あまつさえ炎のブレスで身を焼かれている。

本気どころか、余力が残っているかどうかさえ怪しい状態だ。

そんな彼が、ここまで本気を出さずに戦っていたなんて、とてもじゃないけど考えられない。

石柱の上に残されたままのラビさんも、きっと私と同じ意見だったに違いない。

…目の前で、ガルル君の変貌を目の当たりにするまでは。