「Ａ級狩猟区に認定されるほど危険な樹海…しかしこの樹海で、魔物や猛獣と共存している少年を目撃したという話があるんだ」

「え…」

だって…千獣の樹海に生息する魔物…ケルベロスやバジリスクといった魔獣は、決して人間や亜人には懐かず、熟練した冒険者でも討伐に手こずるというのに。

そんな魔物が棲む樹海で、魔物と共存する少年がいる？

「まさか…」

私はチラリと、ソファに座るその少年を見た。

「彼が？」

「名は『ガルル』というらしい」

私の問いかけにイエスともノーとも答えず、学園長先生は言った。

「サユミ先生。僕が、才能がありながら教育を受ける機会のない子供や、その才能に気づく事なく生活をしている子供の支援をするべく、あらゆる分野で活動をしているのは知っているね？」

両手をポケットに入れ、学園長先生は私の方に向き直った。

「千獣の樹海の噂を初めて聞いた時、僕はとても不憫に思ったんだ。それだけの能力を秘めた少年が、ただ能力を開花させる事もできず、一生を暗い樹海の中で過ごしていくのかと思うとね…」