そのカルデラ湖に私は目を凝らす。

「ねぇガルル君、あれ!」

私があるものを見つけ、眼下を指差す。

「!」

彼もまた、発見した『それ』を確認すべく、即座にグリフォンに命じて着地させた。

大きく翼を羽ばたかせてゆっくりと地面に降りるのももどかしく、私達はグリフォンの背中から飛び降りて、『それ』に駆け寄った。

カルデラ湖の岸近く。

『それ』は朽ち果てた巨体を横たえていた。

リントヴルムの死骸。

鰐のような口から、だらしなく舌を垂らしている。

眼は開いているものの、既に白目を剥いていた。

体の所々に、食い散らかされたような痕跡。

リントヴルムは学園敷地内でガルル君と戦闘して、少なからず傷を負っていた。

そんな手負いの状態で天空険道に戻って来たところを、別の竜種…この中腹付近に群がっていたワイバーンの群れにでも襲われたのだろう。

…決してリントヴルム自身は、弱い魔物ではない。

しかしそんな強力な竜種でさえ、手負いの状態では生き延びられない。

この天空険道は、まさに弱肉強食の縮図のような場所なのだ。