ボサボサの長い髪の毛。

決して目付きがいいとは言えない鋭い眼光。

天空宮学園高等部の制服を着てはいるものの、ワイシャツはズボンからはみ出しているし、ネクタイはしていないし、袖は無造作に捲り上げている。

何より彼自身も、学園長先生と同等かそれ以上に、顔中に傷を作っていた。

高校生というよりは、ヤンチャな中学生くらいに見える。

「彼が…学園長先生に傷を…？」

私はもう一度学園長先生に訊き返す。

まさか、というのが最初の感想だ。

見た所、ただの不良少年といった印象のこの少年。

喧嘩っ早そうではあるものの、学園長ほどの高い戦闘能力を持つ人に手傷を負わせられるようにはとても見えない。

…そんな疑心に駆られているのを見透かされたのだろうか。

「サユミ先生は、千獣の樹海の噂話を知っているかい？」

学園長先生は切り出した。