竜種というのは、元々他の魔物達とは一線を画する。

知恵を持ち、言語を解し、失われた古代の知識を持っている。

これは天空宮市に生息する上級の竜種に限らず、異世界に棲む上位の竜種ならば殆どが該当する。

ならば目の前のリントヴルムが、こういう戦術をとるのも予想して然るべきだったのだ。

『人質をとる』

そう、リントヴルムがラビさんを捕まえて上空へと離脱したのは、まさに人質。

如何にガルル君でも、空を飛ぶ事はできない。

浮遊魔法も知らなければ、翼も持たないのだ。

自由に空を舞うリントヴルムから、ラビさんを奪い返す事などできない。

高々と巨体を上空へと舞い上がらせ、リントヴルムが咆哮を上げる。

「く…!」

その声に、建物の残骸から這い出してきたガルル君はギリリと歯噛みした。

「『娘を返して欲しくば天空険道まで来い』…そう言ってる…!」