だというのに、今朝からガルル君はピリピリしている。

今も頭上を通過する飛竜を鋭い眼差しで睨みながら、何事か考えている様子。

…少し過剰に反応し過ぎのような気がする。

そりゃあ今朝は確かに、天空険道の方でワイバーンがいつもよりも騒がしいけど、だからってこちらに被害を及ぼすような感じではない。

万が一襲撃してきたとしても、この街には天空宮警備騎士団だっている。

街を襲うような害獣を駆逐する任務を持つ、戦闘のスペシャリスト達だ。

ワイバーン程度ならすぐに討伐してくれるだろう。

ガルル君は天空宮市に来たばかりだから、まだ知らないのだ。

「心配ないわよ、ガルル君」

安心させるように、彼の肩をポンと叩く。

ガルル君は視線こそ上空の飛竜に向けたままだったけど。

「…うん」

小さく返事を返してくれた。