ただ。

「どうされたんですか?学園長先生」

私は少し驚く。

左手首に包帯。

右頬に大きな絆創膏。

左頬に引っ掻き傷。

学園長先生はあちこちに傷を負っていた。

彼はこの天空宮学園を統括する高位の魔法使いにして最強の拳闘士としても誉れ高い。

戦闘系スキルを学んでいる生徒達は勿論、この学園の教師達が束になってかかっても敵わないほどの魔法と体術の使い手である下平アルベルト学園長。

そんな彼が、軽傷とはいえ傷を負っているとは。

「ははは…みっともない姿を見せちゃったね」

サングラスの下で、学園長は温和に目を細める。

「いやなに、仕事で少々千獣の樹海に滞在しててね…あそこは危険なところだね。最近じゃあ天空険道の魔物との縄張り争いをしているらしくて…随分生息する魔物が凶暴になっているよ」