先生にもう一礼し、歩きだす俺たち。


「先生、未憂に反応してくれたよ?」


なぜだか、先生が反応してくれたことを不思議そうに話している未憂。


「別に不思議がるような事じゃないだろ?逆に反応しなかったほうが不思議だよ」


またまた不思議そうに首をかしげる未憂。


「どうして?いつもみんな未憂に反応してくれないよ?」


「そうなのか?……未憂、お前……友達とかいるのか?」


聞いていいのか、悪いのか……。聞くことに対して罪悪感があるが、未憂の性格なら大丈夫だろう。そう思った。


「いるよ。えっとねー、翔也!」


「うん」


「あとねー……」


しばらくの沈黙。上を向き、歩きながら考えている未憂。たとえ、今名前が出てきたとしても、もう、その時点でその人は友達と言える存在ではない。完全に未憂に忘れられている。


「あっ!」


いきなり何かを思い出した未憂。ついに、友達でない友達を見つけたのだろうか?


「未憂はねー、未憂のお家知らないんだった!」


アハハと笑いながら歩いている未憂。話が完全に変わっている。しかも笑えるような話ではない。


「未憂、家を知らないってどういう事なんだ?」


未憂は腕を組み、唇をとがらせた。


「んー、わからない。未憂の記憶はなぜか所々無いんだよ……」


「記憶喪失ってやつなのか?」


「さぁ?たぶんそうだと思うよ」


ニコッと笑い、スキップをする未憂。本当は辛いはずじゃないのか?記憶が無いんだぞ?俺なら正気でいられないだろう。そう思った。


「それじゃあ未憂はどこに帰るんだ?」


「んー、未憂はお家がわからないから帰らない。というより帰れないや。アハハッ」


「じゃあ俺の家にくるか?親もいないし、俺の家って無駄に広いだけで使わない部屋たくさんあるしな。どうする?」


未憂は目を輝かせ、首を思いっきり縦に振った。