「ふわぁぁ……」


両腕と手のひらを天井に突き上げ、大きな伸びをとあくびをする。


ベッドの横に置いてある小さなテーブルの上のメガネをかけ、寝癖でくしゃくしゃの髪を手でとくと、寝巻きを脱ぎ捨てて、新しく届いた学校のブレザーに着替えると、自分の部屋を出た。


男の名前は志麻翔也(しましょうや)。今日から高校生だ。


リビングに向かうといつも通り、机の上にあるパンにジャムを塗り食べ始めた。

とりあえずテレビにリモコンを向け、テレビをつけ、テレビの左上に表示された時刻に目を向ける。
AM8:10。


「あーあ、入学式早々遅刻か……。めんどくさ。どうして起こしてくれなかったんだよ……」


そうは言うものの、我が家の父親は大企業の社長で、母親はその秘書。毎日毎日家にいるわけでもなく、海外にいることがほとんどだ。


お金はたくさんあるため、食事や光熱費など生活に支障はないのだが、生活のバランスがぐちゃぐちゃで、一概にとてもいい家とは言えない。


とりあえず学校の支度をして、家を出る。家から学校までは20分ほど歩いた場所にあり、対して遠い距離じゃない。


走っても歩いても遅刻は遅刻だが、とりあえず走って登校する。


学校の門まで走って10分弱だ。入学式は8時15分から。俺は門の前に立つと腕時計を見る。


AM8:25


「やっぱり遅刻は遅刻だよなぁ〜。遅れて入学式に参加するのも何か恥ずかしいし、教室で寝てようかな……」

ぶつぶつ独り言を言いながら門から校舎まで続く少し長い道を歩く。両脇には花壇があり、とても見栄えがいい。

この高校は桜ノ守高校(さくらのもり)。普通の学校と対して変わりはない。授業も先生も生徒も。ただ1つ、違うのは“お金”。全国のお金持ちのお坊ちゃんたちが通う学校なのだ。


俺は校舎の前に発表してあるクラス分けの紙の前に立ち、自分のクラスを探した。


「1年C組……」


俺はすぐ横に掲示してある教室の場所が書いた紙でクラスの場所をさがし、自分のクラスまで歩いていく。