いつもは落ち着いている圭吾だったが、突然矛先が自分に向いたので目を丸くしていた。

「この前フクちゃんが俺に、『写真は風景しか撮らない』って言ってたんだぞ。
人物を絶対に撮らないフクちゃんがお前の命令に従うなんて、代わりに何かを渡したとしか思えない!」

「あ、悠太。確かに僕、風景を中心に撮っているとは言ったかも知れないけど、人物を絶対に撮らないとは言ってな…」

「フクちゃんは黙ってて!」

ピシャリとはね除けられた憲泰は、それ以上何も言えなくなってしまった。

「で、どうなんだ圭吾。フクちゃんに渡したんだろ、ワイロ!」

「……お前よく知っていたな、賄賂(ワイロ)っていう言葉を」

「茶化すなよ!」

悠太の言っていることは端から見れば、ただの非道い言い掛かりにしか過ぎなかった。

しかし。

「そんなもの、僕が渡すはずないだろ。福田の好意で撮ってもらっているだけだよ」

胸倉を掴まれた圭吾はそのまま顔を背け、抑揚のない声で答えている。

「……ていうか」

悠太は自分で訊いておきながらそれには答えずに、今度はいきなり後ろを振り向くと

「お前らも写メするなー!!!」

周囲に向かって吠えだしていた。