俺は、どちらかといえば温厚なほうで。
喧嘩なんてしたことがない。
だけど……こいつのやったことだけは許せなかった。
「お前、やっていい事と悪い事の区別もつかねえのかよ!?」
胸倉をさらに締め上げながらツヨシの体を揺さ振る。
ツヨシは苦しそうにしているけれど、そんなことは関係ない。
怒りがおさまらない俺がもう一度、ツヨシを殴ろうと拳をあげたとき。
「ソラ、もういいよ」
小さな小さな声でノブはそう言った。
その声に操られたように止まった拳をゆっくりと下ろしてノブを見る。
さっきまで羽交い締めにされていた体はもう解放されていて。
ノブの頬にはたくさんの涙が流れていた。