「礼を言うのは俺のほうだ」
「カイル……」
「ありがとう。シュリ」
カイルの言葉に目頭が熱くなる。
そんなこと言われるなんて思いもしなかった。
しかし、カイルの前で泣くなんてなんだか嫌だったからグッと堪える。
「シュリ。お前に出会えて良かった」
「うん。私も、カイルに出会えて本当に良かった」
そう告げ、ニッコリと微笑みあう。
そして、カイルはふっと表情を戻した。
「じゃぁ、俺もう行くから」
「もう行くんだ?」
「あぁ。兵士達が待ちくたびれてるだろう」
「じゃぁ」と私に背を向けて、階段に向かって歩きだす。
一瞬、その背中に手が伸びそうになった。
その服を掴みたくなった。
でも。
掴んではいけない。
そう聞こえた気がして、身体が動かない。