「本当に興味だったんだ。エルシールの姫がどこまでやるのか見たかった。でも、次第に本当に協力しようと思いだしたんだよ。俺に出来ることをしてやりたいと」


柔らかく微笑みながら穏やかに話すカイル。
私は黙って聞く。


「自分から何かをしたのは初めてだ。今まで、同い年の次期国王候補である兄より目立ってはいけない。控え目に、後継者争いが起こらないよう、ひっそりと生きなければとそう思って行動していたから」


いつかのディル王子との会話を思い出す。
カイルの想いは兄王子に伝わっているようだ。


「他国の情報を掴むから旅をさせてほしいと申し出たのも、本当は逃げだった」
「逃げ?」
「ああ。だから……」


カイルは私に向き合い、そして優しく笑った。


「俺を変えたのはお前だよ」