足を止めた。

目に映るのはバスケットボール…と、




その横にへにゃ、と座り込んでいる、女子生徒だった。




『すいません、あの~…』

海がかけより声をかけると、女子生徒はバッと顔を上げた。


その表情は何かに脅えていて、


さらに目には、うっすら涙が浮かんでいた。



『大丈夫ですか!?もしかしてボール当たりました!?』


そんなわけあるまい


と思いつつも、海は口走っていた。

女子生徒は瞳を震わせ、硬直した状態で海を見つめていた。

『とりあえず、保健室に…』

静かに海が女子生徒の腕を掴んだ途端、



バッ



その手を振り払い、女子生徒は走り、逃げ去ってしまった。


海が何か言おうとしている間に、その姿は見えなくなってしまっていた。


『変な子…』


呟き、海はボールを手に取り、体育館へと戻り始めた。





しかし、何故か、物凄く印象に残っていた。





あの、“潤んだ瞳が…”