6月に入った。

いつもより早く目が覚めたあたしは、久しぶりにジンさんの牛舎へ行った。


「バイトはいいのかぁ?」

牛の寝床の掃除をしていたら、ジンさんが遠くから叫んだ。

「今日は休みー!」


久しぶりに晴れ渡る青空を見たら、なんとなく気が向いたんだ。


「休みなら、こんなとこに来てわざわざ牛糞臭くなんなよ?」

いつの間にか隣にジンさんが立っていた。

「好きでやってるんだからいいじゃん」


黙々とフォークを動かしているあたしに、ジンさんがまた言う。


「お前も年頃だったら、たまにはデートぐらいすれよ? あのリツコにも彼氏ができたっていうんでないかぁ」


りっちゃんに、人生初の彼ができたのは先月の話だ。

相手は、同じ塾に通う男子高の男の子らしい。