「優しくて明るい姉の様子が可笑しくなったのは、姉が中学を卒業してから間もなくだった。
中学の、嫉妬に塗れた女子のイジメにも屈しなかったのに……。
高校に入学して少し経った頃、姉には生まれて初めての彼氏ができたの。
姉は彼を愛していたし、彼も同じであると信じていた。
…けど、そうじゃなかった。
その男は、他に何人も女がいた。……それでも、姉は献身的に男に尽くした。
女はただの性欲処理の道具だ、と平然と言うロクでもない男にね。
……姉がストーカーに遭い始めたのは、丁度その頃。」


「ス…トーカー?」


「……待ち伏せされたり、後をつけられたり。だんだんエスカレートしていって……。
姉は部屋に閉じこもりがちになった。目は虚ろになって、どんどん痩せて。
それでも大好きな男がいたから……なのに、男はゴミ同然に姉を捨てた。
中学同様、高校でも女子との人間関係は上手くいってなかったし、そういう事が重なって姉は学校にもあまり行かなくなった。
………その学校に久々に行った日、遅くなった帰り道でストーカーに襲われた。
なんとか逃げたけど、何度も殴られた暴力の跡は酷かった。……美しかった姉の面影は、もうどこにもなかったの。」




梨子は唇を歪めた。


泣きだしてしまいそうになるのを、必死で抑えているように見えた。









「………それから、すぐよ。姉は、17歳の夏に首を吊って死んだ。『スナック・リンダ』の、あの小さな部屋でっ!!」


「………死…んだ…?水沢が…?」