【短編】プロポーズはバスタブで。

 
次のデートでフラれるんだと完全に誤解した、ブサイクな似顔絵が書かれたヒントの紙。

あれには実は、沙織からのメッセージが隠されていたんだ。


【孝明さんはヒカリを愛してる。いつまで疑ってるつもり? そんなんじゃ孝明さん、ヒカリから離れてっちゃうんだから!】


クシャッと丸めたその紙を、プロポーズをしてもらったあとで制服のポケットから見つけて。

開くと、そう書かれてあった。

“じゃあこの絵や吹き出しの台詞は何なの?”と問い詰めたら、沙織はやっぱり、あくまで他人事というように言ったんだ。


「あー、これ? フェイクよ、フェイク。ヒカリがあんまりアホなことで悩んでるから、ちょっと意地悪したくなっちゃった」


テヘッと舌を出して笑って。

それから、こうも言った。


「プロポーズされたんでしょ? よかったじゃん、おめでとう。ヒント料は弾んでもらうからね」


あたしばっかり空回りして、疑ったり不安を募らせたり・・・・。

孝明には口止めされ、あたしには教えてとせがまれ、沙織も相当複雑だったんじゃないかな。
 

 
「・・・・で、ヒント料とやらはいくらで片がついたの?」


孝明が、あたしの髪を撫でながらニヤニヤ笑って聞いてきた。

その顔に無性に悔しくなったあたしは、クルッと体を回転させて背中を向けてボソッと答える。


「3万7千円。家族サービスだって言って、政伸さんと美雨ちゃんの分まで高級寿司を奢らされた」

「ブハッ・・・・!!」

「笑い事じゃないよぉ!! あたしのお嫁貯金が沙織一家に食べられちゃったの!痛い出費よ!」


孝明まで失礼だよ!

とブツブツ文句を言いながら、布団の中でキュッと丸くなる。

すると・・・・。


「ごめんごめん。予想以上に高くついたなと思って。お嫁貯金を崩したのか、それは痛かったな」


そう言って、あたしの体に優しく腕を回した孝明は首筋や耳にキスを落としはじめた。

それから耳元で甘く囁く。


「でも大丈夫。お嫁貯金なんかなくてもヒカリのことは一生食わせてやるから。・・・・てか、その前にもう一回食べてもいい?」

「あたしを?」

「ダメ?」

「・・・・いいよ」

「ヒカリ、愛してる」

「あたしも」





- END -
 

 
『プロポーズはバスタブで。』をご覧頂きまして、まことにありがとうございました!!

一度は使ってみたかったセクシースキンを使えて、やたらと大興奮の作者でございます(笑)


このお話のテーマは、表紙にもありますように「結婚〜Marriage story〜」でした。

彼の様子がおかしいことを浮気だと勘違いして暴走→でも実はプロポーズだった、なんていう王道ストーリーでしたが楽しんで頂けましたでしょうか。

甘めのお話にも初挑戦してみたわけなのですが、書いている間、こんな感じでいいのかな? とずっとドキドキしていました。


短編にも関わらず日ごとにしおりを挟んでくださる方が増えて、それに伴って期待に添えなかったらどうしよう、とか。

(全てにおいて)果たしてこれでいいのだろうか、とか(笑)

いろいろと不安に思いながら書き上げた短編でございました。


長編を書く傍ら、1人短編祭りと題して書いたこちらのお話。

結婚っていいなと憧れを持って頂けましたら作者冥利に尽きます。

このタイトル、ちょっとえっちぃですね すみません
 

 
作者個人としましては、バスタブでのプロポーズはご遠慮頂きたかったりもしますが(←え)

結婚して何年か経って、ちょっとケンカしたときなんかに、思い出してププッと笑えるくらいのシチュエーションが理想です。


キザな台詞やもっともらしいのは作者の性格上、引いてしまう可能性が大きいので

笑いが欲しかったりします。

それだと、ケンカなんて笑って許そうじゃないですか。


さて。

長々と書いてしまいましたが、皆さまの理想のプロポーズはどんなシチュエーションでしょう?

「結婚〜Marriage story〜」をテーマに書いたこちらのお話が、少しでも理想に当てはまるものだったらいいなと思います。

この機に想像してみるのもおもしろいかもしれません。

皆さまの恋愛が素敵な結末を迎えられますように、微力ですが作者にも祈らせてくださいませ。


それでは、ここまでお付き合いくださいまして本当にありがとうございましたm(_ _)m

感謝感謝です!





2010.8.14   rila。
 

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