「ある日、突然、妖魔達が死骸になったところを見た事があるか?」

男の感情の揺れは計り知れない。

「ある日、突然、大切な人が目の前で死んだ事があるか?」

声は静かだ。

静かだが、人の心に訴えかけるほどの感情が篭っている。

「お前が弱いから何も出来ないまま死んでいった。妖魔も仲間もお前が殺したも同然だろう」

手を出せない状況にすればいい。

「お前の言うとおりだ。俺は弱かった。だから、力を手に入れた」

「所詮、負け犬の遠吠えだ。耳が腐る」

人生に再スタートなどありはしない。

男の心は奈落の底へと落ち続けていることだろう。

「お前の慢心が犠牲者を生むってことが解ってない」

「お前が出来ないからといって、俺が出来ないとは限らない。世界は公平に出来ていないんだよ」

失敗だけの世界なら、誰もが身を投げることだろう。

俺は人間を滅ぼし、成功者としての道を進むだけだ。

怒りの中にある男は悲しそうな顔をする。

「生き物は簡単に死ぬんだ。テンプルナイツが日本に渡来すれば死は充満する。血肉が飛び散り、日本の妖魔は土に還る」

「寝言は寝てから言えよ。人間如きが出来るわけないだろう」

「人間、ね」

男は意味深に呟く。

「お前は何をしている?そんなに気になるのなら、お前が壊滅させればいいだろう」

「生易しい組織じゃない」

男は色々な問題を抱えているらしい。