「お前、一体、何者だ」

千鶴のニオイは『理を壊す者』と『理を守る者』の両方が混じっている。

純血でない混合種が世界にいるのか。

人間との子孫を作ろうと考えた妖魔がいるとはな。

自分の血を汚すなどと、馬鹿げているとしか思えない。

「え、えっと、葉桜千鶴です」

焦りながら答えているが、俺が聞きたい答えではなかった。

自分が何者かわかっていないのか?

「刃さん、そんなに睨んだら怖いよ。千鶴が怯えるじゃない」

千鶴を庇う形で前に立っている。

「笹原妹、ちょっと来い」

俺は笹原の腕を掴んで、葉桜から遠ざかる。

「あの女が混合種という事には気付いているのか?」

「知ってたよ。母さんと姉妹の郁乃さんが人間の方と結婚してたからね」

「郁乃、葉桜」

葉桜の情報を頭の中から引き出す。

葉桜靜丞。

任務の達成率が高く、腕のいい請け負い妖魔だと噂をされていた。

娘は二人いて、久遠は里に残り、郁乃は里を出たと聞く。

里を出た方が葉桜で、人間との間に子を儲けたというのか。

人間と娘を作った理由などどうでもいいが、里にとっては異端児だ。

「でも、いい子だよ」

「性格の問題じゃない。ありえない存在は常に異端だ」