改革派の秋野が学校の仕事を選んだから、伴って保守派の用意が行われた。

街には前任の代表者がおらず笹原妹が初めてだったからこそ、秋野がどこで仕事をするか指定できたわけだ。

人間の生活をしながら、裏で手段を講じていくという寸法になる。

もし秋野が別の場所を選んでいたら、保守派も近くで監視を行うことになったのだろう。

しかし、笹原妹が秋野と同じ教師ではなく、生徒という立場になった理由がよくわからない。

保守派の上層部が笹原妹の制服姿が見たいから、生徒側で調査をするようにしたんではないのだろうか。

馬鹿な考えは良そう。

少し距離をとって観察したほうがいいのかもしれない。

「秋野は、何で学校なんかを選んだ」

「若い芽を狩っておけば、後々楽になるからじゃないからかな」

「なら、さっさと行動を起こせばいいだろう」

「いきなり行動を起こしたら、大変なことになっちゃうよ」

単純な理由だ。

単純で解りやすいが、得体の知れない者ほど複雑な考えを持っているはずだ。

もっと他の深い理由がありそうな気がする。

秋野ほどの優秀な奴なら、退魔師など関係なく行動を起こせるはずだ。

学校を選んだ理由は、改革派と別の目的があるというのか。

「あ、美咲さん」

笹原の名前を呼んだ幼い声が、思考を中断させた。

前方から歩いてくる女がいる。

笹原妹とは違う格好をした女で、髪は後ろで結っており背丈は笹原妹より低い。

「千鶴、おはよう」

「おはようございます」

慌てたように頭を下げた。

「呼び捨てでいいのに」

「うーん、まだ難しいです」

俺と千鶴という女の目が合う。

おどおどしている感じはあるが、目の奥は芯が通っている。

だが、鼻についたニオイで、千鶴を睨みつける。