男物らしく、俺でも着られる。

「このままでもいいだろう?」

「今は犯罪者対策が厳しくなってるから、刃さんの格好じゃ入れないよ」

犯罪者扱いされようがされまいが、知った事か。

それに、人間の足に追いつかれるほどヤワに育っていない。

「面倒くせえ。秋野を外に連れ出せばいいだけの話だろ。簡単に俺が見つかるか」

「秋野先生を困らせちゃ駄目だよ。都合があるんだからさ」

無理矢理突き出された、制服を受け取る他なかった。

放り出した瞬間に、冬狐の強襲に遭いそうだった。

「お前、協力的だな。俺は改革派だぞ」

改革派に協力するという事は保守派の理念に反しているような気がするけどな。

「だって、まだ表立って行動してるわけじゃないし、止めるような事もしてないから。それに」

「それに?」

「刃さんって、兄さんみたいに思えるんだ。だから、世話を焼きたくなっちゃうんだよね」

ありがた迷惑だ。

笹原の一家の家族になった瞬間、肩身の狭い思いをしなければならない。

自称妹に余計な事を言われては、ストレスで倒れてしまう。

ブレザーに着替えると、窮屈な感じが身を締める。

制服は動きにくい。

「似合ってるね」

「社交辞令か」

「そんなことないよ。惚れ惚れするぐらい」

褒めているのは本気らしいが、嬉しいとも哀しいとも感じない。

面倒な決まりに縛られているおかげで、窮屈な格好をしなくてはならない。

「お姉ちゃんも先にいってるし、私達も行こう」

「冬狐も学校に行くのか?」

冬狐は大人びて見えすぎていて、服が似合うとは思えない。

町を歩いていれば違和感で、通り過ぎる人間が振り返るだろう。