明日には立ち去ろう。

任務を受ければ家に留まる必要もないし、街から離れる事になるだろう。

特別な何かがあるとは思えないからな。

街を中継ポイントとして集合し、後に行動する算段なのかもしれない。

野宿は確定だ。

でも、資金の投資があるならば、宿屋で休養を取れる可能性は増える。

体力の回復を望むのならば、無いよりはあったほうがいい。

ただし、今みたいな望んでない形で泊まりたくはなかった。

保守派に行動が筒抜けになってしまう。

同族で、組織が一緒であるのならば問題はなかったんだがな。

「今はどうでもいい話だな」

今日を早く過ぎさせるためには、寝る事が一番だ。

目を閉じる。

瞼の内側は、宇宙のようなどこまでも続く闇がある。

意識せず、暗闇を漂っていれば光の世界はすぐそこだ。

数分間、生と死の狭間を漂っていると甘い声が聞こえてきた。

「美咲ー、寂しいから一緒に寝よお」

誰かが入ってくる気配がある。

聞き覚えのない声だが、不審者とは思えない。

家の鍵を閉めていたはずだし、不審な音もしていない。

聴力はいいほうで、家中の距離なら小さな音でも聞き取れる。

「今日はベッドじゃないんだ。じゃあ、オイラも一緒に床に寝るう」

美咲という名前を言っている時点で身内だろう。

俺の背後で横になる音が聞こえてくると、両手を回してくっついてくる。

胸の柔らかい感触がするが、喜びはしない。

それよりも、眠りを妨げられたことによる苛立ちのほうが上だった。

「美咲ってー、一日で筋肉がついたねえ。いい感触だよお」