大胆に出てきた。

マンションの方へと引っ張られていっている。

「強引だな。俺の意思を尊重しようとは思わないのか?」

「刃さんは家で寝る。解った?」

冬狐とは性格が正反対だな。

冬狐が鯖だとすれば、妹はトロぐらいだろうか。

高価かどうかじゃない、しつこさがあるかどうかだ。

どっちかといえば、冬狐のほうがあっさりしていて好ましい。

しかし、早々に保守派に目を付けられるとはな。

慎重に行動するどころの問題じゃない。

捕虜同然の扱いだ。

抜け出さなければ、身動きの取れない状態のままになる。

さすがに、妹が監禁を行うとは思えない。

逃げ出す算段を思考していると、笹原というプレートがついた家の前まで到着している。

「はい、到着」

扉の開けた先には玄関があり、部屋へと続く廊下がある。

「先に入れ。俺は後でいい」

「後で逃げ出すつもりでしょ」

妹が俺の背中をおして、屋内へ無理矢理押し込んだ。

本当に強引な奴だ。

来た以上は諦めるしかないようだ。

「ちゃんと靴は脱いでね」

「解っている事を一々言わなくていい」

俺は履いて来た草鞋を脱いで、冷たさを感じるフローリングへと上がる。

「手前の扉がトイレで、その次の扉がお姉ちゃんの部屋だよ」