京君が窓から視線を外さないまま口を開いた。

「こういう日は好きじゃない。」

ゼリーを口に入れながら京君の消えかかりそうな

声を聴いた。

「そうですね、あたしも曇りの天気は中途半端で

そんなに好きではないですよ。」

曇り空ってどっちつかずな気がする。

灰色の空は雨色にも似ている。

いつだったか聞いたことがある話だ。

「空の心臓ってどこにあると思いますか?」

この広大で広い宇宙の心臓などあるものかと

その時は馬鹿にした。

「・・・・・何かの哲学?」

そういう類なのかはあたしも忘れた。

こんな日にはそれが見つからない。

「太陽だと思いませんか。

いつもは曝け出すその姿が見えないと

人は不安に駆られるそうです。」

その眩しい光を浴びてこそこの

世界に存在しているのようだと

何かに書かれていたわ。

「無彩色な空は現実逃避に丁度いい

とは思いませんか?青い空を見ると

現実を知らしめられるようだけど、

不透明でまるで何かを隠してくれる

みたいな今日のような空はそれこそ

嫌いになれません。」

好きでも嫌いでもない本当の中間。

何をとっても中途半端。

極端なことなんてない。

「・・・俺は嫌いだ。」

吐き出すように言い、挑発的な凍りついた

瞳を窓に向ける京君。

「京君の好きは極端なものがあると思うので、

中途半端が嫌いなんでしょうね。」

飲み物もそうだけど、人もそんな感じだ。

ユウヤのようにおチャラけて誰でも仲良く

するわけでもなく特定との人としか上手く

付き合うことが出来ない京君は勿体ないと思った。