京君は前髪で瞳を隠すようにして窓から

視線を外さないままそっと呟いた。

「・・・困らせるたまに言ったんじゃない。」

その声は掠れて色っぽく聞こえた。

京君、今日は少し具合でも悪いんだろうか?

「うん、分かってるよ。」

京君があたしを困らせるなんてそんなの天地が

ひっくり返るようなほどビックリニュース。

「・・・・・何か、調子狂う。」

だから、京君今日は体調でも悪いのでは?

もしや、熱中症にでもなったのでは。

京君の額に手を伸ばした。

一瞬、怯えた京君に手を引っ込めた。

そういえば、京君とはいつも一定の距離があった。

あたしがその領域に踏み込んでしまわないように

といつも誰かが見張っていたような気もしなくは

ないことでどんなに仲良くしてくれてもやっぱり

誰にだって壁はあるものだと悟った。

「・・ごめんねっ、あたしなんかが烏滸がましい

ことして、何か飲み物買ってきますが何かリクエ

ストでもありますか?」

それでもいいとさえ思った。

京君が距離を置きたいならそれに応えてやるべきで、

あたしだって最初は否定しまくっていたのだから

自分だけそんな簡単に受け入れてもらえるなんて

身の程知らずも甚だしいと思えた。

他の6人も実際的にそこまであたしを信用して

いるわけでもないだろう。

たかが、3か月程度の付き合いで芯まで仲良く

出来るほど人間出来てない。

あたしだって言えることと言えないことがある。

それと同じで今丁度自分に思い知らせるいい機会

になったとそう思った。

そのまま振り返ることもせずに教室を飛び出した。

だけどね、やっぱり寂しいって思っちゃうのは

どうしてなのかな?

頭ではいくらだって理解させる理屈が思いつくのに、

どうして心にすんなり入って諦めさせてくれないの?

自分がこんなに諦め悪い人間だと思わなかった。