冷や汗をかきながら京君をチラチラ見る。

「京君、ごめんねっ!!

こんな取っ付きにくいあたしなんかに

付き合ってもらって今度何か奢るよ。」

申し訳なさで土下座しようかと思った。

そんなあたしに京君はフッて笑って、

口元を手で覆った。

「京君って笑うと何かいいっ!!」

かっこよさが柔らかくなった感じ、

ビューティーさに近寄りがたいイメージが

あるけど京君が笑うと場が少し和む。

「・・・笑うなって言われた。」

へっ、急に何です?

ビックリして京君を2度見する。

焦りというより困惑に近い状態で、

京君を見つめるとその一瞬で瞳が

氷のような冷たさを放った。

「京君・・・?」

何か地雷でも踏んでしまったのかしらと

思って内心パニック状態に陥る。

「・・・ある人にそう言われたことがある。」

その冷たい瞳が窓に移って煙たいぐらい

厚い曇り空を見て困惑気味に眉を下げた。

その表情がどうしようもなく心痛くて、

どうしたらさっきみたいに笑ってくれる

のかなって必死に考えて見た。

京君は誰よりも無口な上に分かりにくい男の子だ。

ナル君みたいに素直に何でも言うわけじゃない。

慶詩みたいに馬鹿口調で突っかかるわけでもない。

伊織君みたいに冗談を言ったりすることもない。

ユウヤみたいに大げさなぐらい笑ったりもしない。

馨君みたいに話し上手でもない。

ちぃー君みたいに天然発言することもない。

どうしたらいいのかなんて分からなくて、

史上最大の難題をかっせられた。

これまで解けなかった難問なんてなかった以上に、

これほど難しい問題に脳内を活発に動かせる。

エンジンをフル回転させて京君の言葉をもう

一度考えて見ることにした。

『・・・笑うなって言われた。』

そんな酷いこと言ったヤツは誰だっ!!

このあたしが許さんぞ。