すぐに外にポイッとゴキブリの気絶したヤツを

投げると手をヒラヒラさせて掃除に取りかかろうと

したら、慶詩にすごい嫌そうな顔で手を洗って

来いと罵倒された。

「えっ、別に内臓出てませんよ?」

手の平を確認のため広げると確かに何もない。

「おめー、女じゃねぇーよ。」

もう何度言われ続けているか。

そろそろ心が鋼レベルで耐震強度にしっかりと

備えが出来てしまうほどだ。

「ゴキブリごときでビビってるようでは・・フッ」

慶詩の弱点を知った今あたしは無敵となった。

ヤツを黙らせるにはコイツがあったのかと

味をしめた。

「笑うんじゃねーぞ!!

そんなもんを平気で手に乗せちまうおめーはぜってぇ

女だって認めねぇぞ。」

失礼にもほどがある言い方だ。

「ああ、結構ですよ。

その代り、次出たら慶詩の下駄箱にこっそり

入れておくわ。」

ふっふっふ。

この心の痛みを思い知れ!

「おめー最低だな!!」

何とでも言えばいいわ。

小学生レベルの言い争いに付き合ってる暇ないもの。

掃除終わったらサユとコンビニ行く予定だったのよ。

さっさと掃除を終わらせなきゃね。

「日和、ちゃんと手を洗ってからよ。」

サユはあたしを軽く避けてきた。

こ、これは新たなショッキング。

避けるなんて酷いわっ!!

サユのためにゴキブリさんを退避させた

というのにその来るなって感じ。

「うわ~んっ!!さーちゃん、酷いっ。」

そう言いながら音楽教室を後にした。

その後、トイレに直行してバシャバシャ

手を洗った。

ある意味、慶詩の言葉より威力のあるサユの

避けるは強烈な右ストレートだった。