ナル君は赤面したままアワアワ馨君に視線を移す。

「ナル、良かったね。

日和ちゃんの方が綺麗に結んでくれるよ。」

馨君は優しく笑う。

「馨っ、ひよりんを・・・・」

ん?

ナル君、大丈夫?

やっぱり、心配だ。

「ナル君、熱中症は自覚症状が最初は

出ないみたいだから戸惑うのも分かるけど・・・」

ナル君は顔をフルフル振った。

「ヒヨリン、ネクタイの結び方教えて。」

きゅんっ。

ときめくよ。

「えっとね、見える?

大丈夫、最初は難しく感じるけど慣れて来るよ。

ナル君は男の子だから今後も何かと使うかもしれ

ないし、確かに覚えておくと損はないかな。」

ナル君は頷いて一生懸命見る。

「ヒヨリンって何でも出来ちゃうよなっ」

そんなこと言われると照れる。

「そうなの。ナル君、日和ってば憎たらしい

ぐらい完璧主義者なのよ!!」

サユがナル君に訴えかける。

「えっ、苦手なこともあるよ。」

何でも出来るようにならなきゃいけなかった。

小さい頃、母さんが突然海外に行くと言った

その日からあたしは鋼のような強い心を持ち、

何事も自分で片付けられる母さんのような

女になってみせると心に誓った。

「あんたが出来ないことなんてないでしょ。」

いや、あるんだな。

確かに家事全般出来るし、ご飯作るのも得意。

裁縫も小学生の時から田舎のばあちゃんかよって

言われようだった。

「何が出来ないのよ?」

サユ、あたしロボットじゃないから出来ない

ことの1つや2つあると思うんだが。

例えば、そうだな。

何があったかしら?