「そうだったの?」
「うん、何かすごい悪い気がしてさ。
ただでさえ、マンションとは逆方向でしょう?
近いとはいえ手間を掛けさせるとかすいません
って感じになってしまって。」
ナル君はそんなことないよって言う。
「細かいとこ気になる?」
京君、そういうわけじゃない。
「友達はサユとマコ君と他に田中以外
ちゃんとした友達は居なかった。
だから、何が迷惑になるのか嫌な思い
をさせてしまうのかと分からなくなる。」
人との接触を避けてきたあたしがすぐに
分かり合えるのは難しいんだ。
「別に何とも思ってねぇ。」
ちぃー君。
そうやって一々確かめて行きたいの。
「うん、すでにたくさん迷惑掛けてるから
もう開き直ってしまおうと思う。」
ふはって満面の笑みを浮かべた。
多分、ここまで来るのが簡単なようで難しい。
人の気持ちを理解出来たらいいけど、それは
やっぱりどんなに頑張っても出来ないと思う。
だから、嫌だったら嫌って言ってほしい。
「おめぇに振り回されるのは慣れてきたからな。」
「なっ、あたしも十分振り回されてます!!」
慶詩の馬鹿者!!
大体、いつもあたしが振り回される役じゃない。
「なぁ、あれマジでお前の家?」
驚愕の顔を見せる慶詩。
「マコ君も最初に来た時は腰を抜かしていた。
そんなに驚く要素が一体どこにある?」
家が見えてきた。
門まで後少しってところだろう。
みんなビックリした顔している。
何がそんなにビックリしたのか分からない。
黒い門が見えてきた時だった。
遠目でもそこに誰かが居るんだって分かった。
ねぇ、どうして居るんだ?
「ひーちゃん、ただいま。」
その声に鞄を落とした。