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「ユウヤ、分かってやれよな。」
俺は知ってるんだよな。
あの一瞬でも日和ちゃんがどれだけ怯えていたか。
「でも、ヒヨリン分かってなさすぎ」
「それは建前だろうよ。
ああいう子だってお前らが理解してやらなきゃ、
あの子はそう簡単に弱味を見せたりしないんじゃないの?」
震えていたんだからな。
夏だっていうのにこのクソ熱い日に、
体が震えあがるほど怖い思いしてんだ。
少しは察して優しい声掛けてやれよ。
「やっちゃんには弱味見せたみてぇな
口ぶりじゃねぇか?」
慶詩、イラつく気持ちも分からなくはない。
日和ちゃんがヘラヘラしてる理由ぐらい
分からないなんてお前らはあの子の何を
見て来たんだ?
俺より長い時間あの子の傍に居ただろうに。
「あのな、怖くなかったわけねぇだろ。
必死に逃げてたんだろうな。俺にぶつかって
来た時だって尋常じゃないぐらいの焦り具合だったぞ。」
「じゃあ、何でそれをアイツは言わねぇんだよ!!」
「慶詩は日和ちゃんの何を見て来たんだ?
この数か月で日和ちゃんがどういう子だって
知ってんだ?」
あの子がこいつ等と真面に付き合ってくれてる分、
俺はあの子の力になりたい。
「チビの脳内花畑妄想女。」
「他に言ってやることないの?」
可哀想な言われようだな。
「自分で何でもする。」
ユウヤがポツリ呟いた。
「弱音は吐かないよね。」
馨は分かっていたのか苦笑いだった。
「ヒヨリンはいつも自分で何とかしようって
するんじゃん。」
ナルも分かってるようだな。