やっちゃんさんに負ぶってもらって(黒塗りの
前にも乗せてもらったことのある車だ)車の助手
席に乗せてもらってマンションへと向かった。
その車内には洋楽のCDがあってやっちゃんさんと
洋楽の話で盛り上がった。
さっきのことを聞かれるかと思ったあたしは
拍子抜けだった。
「あの、本当に用事の方は大丈夫なのですか?」
「大丈夫、大丈夫」
やっちゃんさんは気さくな方だと思う。
外見はワイルドなお兄さんだけど、中身は
とっても面白い人で話が合う。
「用事は大したことなかったし、丁度終わった
頃だったからね。」
「そうなんですか?」
それなら、良かった。
「日和ちゃんはそういうこと気にしなくていいから。」
そう言われても気になってしまうわ。
用事があったのならそっちを優先するのは
普通のことでしょう?
「ごめんなさい、迷惑をお掛けして。」
だけど、やっちゃんさんと遭遇して
何よりだったことは確かです。
心の底から感謝を述べたいです。
「それから、ありがとうございます。」
にっと笑うとやっちゃんさんはふはって
笑って左手で頭を撫でてくれた。
「日和ちゃんは良い子だね。」
多分、やっちゃんさんは思ってるよりも
ずっと優しい人なのだろう。
そうじゃなかったら、こんなふうにあたしを
助けてはくれなかったと思う。
それにしてもやっちゃんさんは何者なのかしら?
あの男たちの怯えようと言ったらゾンビに出くわし
ちゃいましたって感じだったような気もしなくはない。
それまでは勢い増していた男たちを何もせずに
黙らしたことの凄さと言ったら何と表現して
良いか見当たらないぐらいだ。
もしかしたら、やっちゃんさんには特殊な
周波数が出ているのかもしれない。