「日和ちゃん、どうしてこうなったのかとか
詳しい話は家でしようか。怪我してるみたいだし
日和ちゃんをこんなところに居させたくないからね。」
やっちゃんさんはそう言うとポンと頭を撫でてくれた。
だから、それでまた安心出来た。
あたしはやっと安全に帰れるんだってそう思ったら
足に力が入らなくなった。
「や、やっちゃんさん?」
腰が抜けて立てません。
「んっ?俺と一緒に帰ろうか。
車向こうに停めてあるからって
そうか歩けないのか?」
ええ、まず立てません。
「あ、あの用事があったのではありませんか?
すみません、あたしやっぱり自分で帰っ」
「日和ちゃん、俺は全然困ってないからね。
日和ちゃんが自分で何でも出来ることは
知ってるけどね、もう少し人に頼ることも
恥ずかしいことじゃないよ。」
えっ?
だって、やっちゃんさん!!
「それに歩けない子置いて行けないでしょ?」
やっちゃんさんは背中を向けてしゃがんでくれた。
「やっちゃんさん、カッコイイですね!!」
やっちゃんさんを見習わねば。
「はいはい、女子高生にそんなこと言われる
とは思っても見なかったね。」
「ヒーロー登場のワンシーンかと思いました!」
本当にそんな感じだったよ。
やっちゃんさんの背中に体を預けた。
その大きい背中に乗せられて歩くネオン街は
やっぱりあたしにはあまり感じの良い店に見え
なくて今になってすごい震えが止まらなくなった。
あのまま、あたしは捕まっていたらと考えると
背筋が凍りつくほどの恐怖を覚えた。
寒くもないのに鳥肌がたった。
あの日、明香里ちゃんを変質者から救った時
の男がハイエナのごとく明香里ちゃんを見ていた
あの目を思い出してしまって心が折れそうだった。
泣いたりはしないけど、こんなこともう二度も
体験したくないなってそう思った。