それから、またしばらく走りどこに向かっている

のか分からずにひたすら逃げることに専念した。

ただ、捕まったらこれはどう考えてもただで返して

もらえるわけないとは気付いた。

その内、諦めてくれるんじゃないかってそう思った

のがどうも甘かったみたいだ。

あたしはもうしばらく走りっぱなしで体力が底を

尽きそうなぐらい疲労感が半端ない。

それにも増して下駄で走っている。

これが一番の原因である。

慣れない履物で走るこれは一番やってはいけない。

足にこれほどかってぐらいの負担が掛かる。

そして、もう鼻緒が限界だと言っている。

『日和ちゃん、もう俺っち寿命です。』

「そんなこと言わないで鼻緒君!!』

まだ、あたしのために頑張るのです。

『だけどね、日和ちゃん。

物には限界がやってくるんだよ。

俺っちのことは忘れないでくれ。』

「ま、待ちたまえ!!」

あたしをこのピンチな状況で君は見捨てる

というのだね!!

『もう俺っち頑張ったと思うんだ。

長い間お世話になったよ。』

「いや、行かないで!!」

今、お前に行かれると困るのだ。

※下駄と会話をする日和にどうかお付き合い下さい。

『日和ちゃんと行ったお祭りは俺っちの全盛期

だったよ。しばらく一緒に行けなくて寂しかった。』

分かった、今度また連れてってやるからもう少し

働くのだ!!

「うん、今年は君と一緒にどこまでもって。」

『日和ちゃんは俺っちをすごく大切に使って

くれて嬉しかったよ、いつかまた君の元に

舞い戻って来れる男になるさ。』

いや、行かないでって!

このままじゃ、鼻緒君とさよならしなきゃ

ならないってことだよね。

それは更なるピンチがやってくるんだな。