それでも、捕まるぐらいならしょうがない。
行きたくもなかったところを通ることになっても
見なかったことにする。
「人に紛れてこっちもあっちも不利な状況ですね。
これを機に向こうまで身を潜めて移動しましょう。」
人がいい感じにカモフラージュしてくれて、
すごい気分は悪くなったけど良かった。
香水の匂いがきつくて頭が痛くなりそうだ。
吐き気さえして不治の病にでもかかったのかと
かなり心配になった。
「ひよっち、顔色悪いよ?」
人に酔ってしまったようだ。
こんなにたくさんの人に揉みくちゃにされると
萎えてしまった。
「平気です。」
クルミちゃんに心配を掛けてはいけないわ。
もう少しの辛抱です。
繁華街を通り過ぎたらきっと逃げ切れます。
「ひよっち、後少し。」
サラリーマンやゴージャスなドレスを着た
女の人がたくさん居る中やっとゴールに辿り
着けたようだ。
そこから、マッハの高速ダッシュで殆ど男たち
を撒けたようでクルミちゃんとハイタッチを交わした。
こんなに達成感を感じることになるとはビックリです。
そして、前よりもクルミちゃんとの距離が縮まった
みたいで何だか嬉しいわ。
タクシー広場でクルミちゃんを送り届けた。
「ひよっちも一緒に帰ろうよ。」
「いや、あたしはコンビニに寄って
帰るので大丈夫です。以後はこのような
ことにならぬよう本当に気を付けるのですよ。」
クルミちゃん、そして顔がとってもグロテスクだわ。
早くメイクを取ることをお勧めしたい。
タクシーの運転手も苦笑いだった。
もう歩ける自信ないわっていうクルミちゃんは
タクシーで帰ることにしたんだ。
「巻き込んでごめんね。」
「本当ですよ、こんなことは金輪際お断りです。
次は一緒に逃走中してあげませんからね。」
だから、本当に気を付けてね。