早く行ってくれないかな?
ここで会話されても困るわ。
身動きが出来ないのも結構ストレス溜まる。
それに気を抜いたら物音出しちゃいそう。
ジワジワ攻める作戦だっていうのね。
忍耐力は負けるわけにはいかないわ。
「今の西のトップはかなり出来るヤツだってな。
幹部も強いって言うしな。」
退屈になって来たわ。
「あっちで見かけたヤツ居るみたいっすよ。」
バタバタ足音が消えていった。
「ひよっち、黒宮君たちと仲良かったよね?」
「へっ、うん。」
クルミちゃんが急に声を掛けてきた。
「あたしが言うのもなんだけど、黒宮君たち
はさっき話に出てた西…ウチらが住む西地区
でも強くて有名な族で、ウチの学校のトップでも
あるからってみんな近づかない」
そういや、みんなもそんなこと言ってたな。
暴走族だって。
「そうなんだ、クルミちゃんは怖い?」
「う、どうだろう。ひよっちが傍に居る時は
角がないっていうか…人は見た目じゃないって
分かったんだけどね。」
「そっか、あんまり怖がらないであげてね。
実は優しい子が多いからさ、ちょっと捻くれ
てるだけで案外可愛いもんですよ。」
みんなは怖がられるとか言ってたような気がする。
あたしはそういうことに疎いからただどこを怖がれば
良いのか分からなかった。
「ひよっちなんかお母さん化してない!?」
あははっ、あんな大きな子ども要らない。
しかも、世話かけられてばかりじゃないか。
「よしっ、クルミちゃん逃亡再開しますよ。」
若干、人が疎らになった絶好のタイミングを
逃しちゃならないわ。
これで一気に突き放して逃げ切れる。
「うん、ひよっち足大丈夫?」
下駄がもう可哀想な状況ですよ。
多分、寿命がキテマス。