その日は元々とくにこれといって予定は入っていなかった。
ただ朝からの日課は欠かさずにラジオ体操から始まり、
公園で太極拳をやるおばさまたちに交じるという試みをして、
ガーデニングをしてからジョセフィーヌのお散歩に出かける。
お昼は適当に冷やし中華を作って家で優雅にヨガをしている
時にある方からの連絡があった。
まだお昼っていうこんな時間に何の用だろうと思いながら
何の躊躇もなく電話に出たのはその人の人柄だろうか?
「はい。」
「日和ちゃん、今大丈夫?」
珍しく馨君からの電話にソファーに座ってテレビの音量
を下げて答えた。
「うん、どうかした?」
あの怪我をして以来みんなには会ってない。
慶詩と会ったのは5日ほど前のことだったかな?
それから一度も連絡来ないしみんなも忙しいの
だろうなと思いながらあたしは毎日図書館に
行ったりサユと遊んだりしている。
「今日は何か用事とかあるのかな?」
「ううん、ないけど。」
とにかく、暇してヨガしていたぐらいだ。
これが終わったらジグソーパズルでもしようかな
と思ってたし、お兄ちゃんが送ってくれたんだよね。
すごい細かい星空のジグソーパズル。
これは集中力必須だなと思いながら先延ばしに
していたものをそろそろやるかなと思ってて。
「それじゃあ、出て来れそう?」
「うん、大丈夫だよ。」
馨君からお誘いとは本当に珍しい。
とにかく馨君は謎に包まれた男の子だ。
基本優しくてよく笑ってくれてるけど、
あたしはよく分かるんだよね。
馨君もあたしと似た感じで愛想笑いが
染み付いてるって言うんだろうか?
前にやっちゃんさんかターヤンさんが
言っていたいつか本当に笑い方を忘れて
しまうってヤツ。
馨君の瞳が笑ってくれる日は果たしてやって
くるんだろうかってそう思ったこともある。