だから、あたしは全てのことを諦めたくない。
「ところで、お宅の夕飯は良いのですかね?」
慶詩がご飯作ってるって話だよね。
あんた、一番出来なさそうに見えるよ。
人は見た目ではないとはよく言ったものだ。
「伊織が居るから平気だろ。」
そして、人に任せちゃうのね。
「ふ~ん、じゃあ、もう少し付き合いたまえ。」
もう一回やっておこうかな。
「まだやんのか?」
「だって、何かすごい楽しいよ!!」
バッターボックスに駆け込んだ。
うわっー!!
すごいスピードでっせ。
「だっせー」
ケラケラ笑う慶詩が炭酸飲料をベンチに置くと、
「タイミングかなり遅れてんぞ。」
何気アドバイスをくれた。
「うひょっー」
振り続けること20球。
ちっとも当たらないと言うね。
腰を抜かして地面に尻もちをつくしさ、
上手く行かないこともあるんだなって知った夏。
「下手糞。」
「なっ、さっきは超人と褒めてくれたではないか!!」
落ち込むのです。
その後結局空振りを披露したあたしは慶詩に散々笑われた
挙句尻もちついたあたしに涙を浮かべるほどのツボに入った
慶詩の笑い声がバッティングセンター中に響くことになった。
こうして初めてのバッティングセンターは幕を閉じた。
随分動いたから楽しかったのだけど、始終思い出し
笑いする金髪ライオンを横にうんざりするのだった。
そんなに笑わなくたっていいじゃないか。
あたしだって好きで尻もちついたわけじゃない。
次に来るときはもう少し上手くなってるといいなと
思いながらバッティングセンターを後にした。