もしかしたら、慶詩は1週間もろくに体動かして

なくてつまらないあたしを誘ってくれたのかもしれない。

「あたしあの速度にいつか挑戦してみたい!」

慶詩のスピードはまだ無理そうだ。

通い続けてたらいつか打てるかも!?

「はぁ?おめぇー慣れるつもりかよ。」

「うん、だから、慶詩が来るときはあたしも

誘ってくれたまえ。」

慶詩が憂さ晴らしする日でも落ちつきたい日でも、

ただ単につまらなくなった日でもいつでもいい。

「おめぇと来るとかマジねぇわ。」

「なっ、今来てるじゃないですか!!」

慶詩の憂さ晴らしじゃなくてあたしの憂さ晴らしに

なっちゃうかもしれないけど、あたしが付き合って

あげないこともないよ。

「ここ結構気に入った。」

「あーそうかよ。」

慶詩が自販機で缶ジュースを買う。

「あ、あたしの分はねぇ!!」

便乗してもらおうかしら。

後でお金返せばいいもの。

「オレンジだろ。」

な、何だ。

あたしの分を先に買ってくれたのか。

「な、何か企んでいるのか!?」

慶詩が変です!!

「別になんでもねぇーっていうか失礼だろ?

この俺様が買ってやったのにその口のきき方

どうにかしねぇとな。」

オレンジジュースのプルタブを引っ張る。

「別に付き合ってやらねぇわけでもねぇけど、

あれはかなり通わねぇと無理だぞ。」

慶詩はバッターボックスに視線を移す。

「うん、確かにそうだね。

でも、いつか打てるようになったらいいよね。」

「そうだな。」

そしたら、きっと嬉しいはずだ。

何かを得るってそういうことだと思う。

自分が頑張れば頑張っただけのご褒美が

あるとあたしは思うから。