確かに朝食は3杯ご飯をおかわりしたが、

ちょっとレディーに大して酷いわ。

「いてぇーな、おい!」

「きぃぃっ-―---―!!」

伊織君の脇腹を摘まんだ。

な、何て良い体してんだ!!

ちょっと、嫉妬しそうなんですけど。

エンジンを掛ける伊織君は慣れた手つきで

ハンドルを握る。

やっぱり、みんなバイクという乗り物の

操作はお手の物ってことなのね。

「ちゃんとつかまんねぇと振り落とすぞ。」

そ、それは大変だわ!

この間はちぃー君だったけどもね。

伊織君がどんな運転してくれちゃうのか

分かったもんじゃないもんね!!

死んでもこの腰から手を離さないわ。

「おめぇ~絞め殺す気か?」

伊織君、それちぃー君も言ってた。

「死ぬなんて嫌だ!!」

バイクのハンドルを回す伊織君。

バイクが音を立てて動き出したことに

よって力いっぱい伊織君の腰にしがみつく。

「何が悲しくて妄想ひよこの面倒見なきゃ

なんねぇんだよ。」

「ごめんねっ、伊織君危ない妄想女で!!」

別荘を出て車道を走らせるバイクは森の景色

が次々と変わって行く。

前を走る車をビューンと抜かして行く様はもう

軽くジェットコースターより絶叫モノだった。

「ひぎゃああああ」

目が回りそうであります。

伊織君、意外とスピード出てますよ。

出してねぇよっていうけどさ、さっきから

車を何台も抜かしてませんか?

必死に伊織君の腰にしがみつくあたしは、

今の状況を例えて言うならば絶壁の真上に

命綱をつけてぶら下がってる感じだ。

よく体を張ってる芸人さんがやる大仕事を

体験しているみたいだった。