オロオロしながらも頭が混乱する。
「待った」
頭が追いつきません。
こんなことは初めてですよ。
オーバーヒート寸前のあたしにちぃー君は、
フッと笑うと舌を出して却下した。
「待てねぇ」
ちぃー君、何か楽しんでないか?
エンジンを掛けると漆黒の車体がグラっと揺れて、
動き出したみたいで少し不安になった。
「・・・俺、死ぬ」
ちぃー君、ごめんよ。
でも、怖いものですから。
「うひっ、ちぃー君手加減して!!」
ちぃー君の腰に巻きつく腕を力の限り
抱きしめた。
走り出したバイクは安全運転だった。
それはすごい手加減してくれたみたいで、
風を切って走るちぃー君を前にこんな
使い勝手のいい乗り物があったとはと
思い知った。
慶詩が走らせたバイクはちっとも見当たらない。
良かった、ちぃー君で。
慶詩のバイクには絶対に乗りたくないよ。
それにしたってちぃー君は眠そうだったのに
バイクを走らせる時の顔はムカつくほどカッコイイ。
惚れ惚れするほどの美形にイラっとしながらも、
普段はボケッとしてるちぃー君の生き生きした
素顔を見れた気がした。
信号は殆どなく学校の近くにある雑木林に
バイクを停めるとすでに竹藪に入ってる
ユウヤと慶詩が遊んでいた。
おい、何しに来たか分かってるか?
「ちょっと、ちゃんと良い笹を探したまえよ。」
竹藪の中に入るとチクチクした。
ちぃー君は入りたくないのかこっちを見て
動かなかった。
「っげ、虫だ。」
みょーんと伸びた蓑虫を横目に慶詩が
嫌そうな顔をした。