夕方、読書をしながらユウヤが来るのを待った。
あれ、そういえば家まで来たことないから迎え
になんて来れないじゃん。
坂道を登るの大変だろうからって敢えて家の少し前に
ある電柱でいつもおさらばするけどもさ。
果たして、あたしのこと忘れちゃいないだろうな?
読みかけの本をテーブルに置いて冷蔵庫に麦茶を
取りに行った時、あたしの普段鳴らないケータイが
静かに鳴り出した。
アイツ、電話してきたと言うのか!?
急いでリビングに戻ってケータイを手にする。
「・・・はい。」
麦茶を片手に電話に出る。
「あ、っとヒヨリン?
俺、ヒヨリンの家知らねぇの忘れてた。」
お前、馬鹿だろ。
普通に気付くよね。
いや、あたしもさっき気付いたけどさ、
「もう準備出来たか?」
来てから気付いちゃうとかユウヤの恐るべき
行動力にはビックリしてしまう。
「うん、出来てる。ちょっと待ってて。」
服はジーンズ生地のズボンをロールアップして、
Tシャツに虫除けをスプレーしてと竹藪準備は
万端だった。
鞄を持ってすぐさまお家を出た。
『ハニー、いってらっしゃい。』
ジョセフィーヌはいつもそう言ってあたしを
送り届けてくれる。
「いってきます。」
ジョセフィーヌの首に腕を巻きつけてオデコに
キスを落とす。
これが日課となっているぐらいあたしとジョセフィーヌ
はラブラブなのだ。
バタバタと駆けながら坂を下っていつもの電柱のところ
をキョロキョロ見渡すと誰も居なかった。
「おいっ!!」
来てないじゃないか。
ユウヤの馬鹿者!!
何故、電話掛けてきた。
それから10分ほどして彼は現れた。
「あれ?早くねぇか。」
お前、女の子なのか?
支度に時間かかちゃうのね。
てっきり来てるもんだと思ったし。
あたしが待っちまったじゃないよ。