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「ふふふっ、懐かしいの思い出した。」
夏になるとふと食べたくなるんだよ。
甘いかき氷でもオレンジ味は特別美味しく感じる。
「つまり、おめぇーは父ちゃん大好きってことか?」
慶詩、別にファザコンではない。
むしろ、これが普通の領域である。
「あたしがじゃないよ、父さんがあたしのこと大好きなの!」
認めはしないよ。
だって、父さん調子乗るもん。
ひーちゃ~んって言って出てきそうなんだもん。
「おめぇーが箱入り娘だってことがよーく分かった。」
伊織君、箱入り娘って滅多に外に出ない家庭で
大事に育てられた人のことだよね?
「それとはちょっと違うと思うよ。
何にでも挑戦するんだって言われて育てられた。
だから、外でよく遊んだと思う。
公園で引力についてを一日考えた日もあった。
日常の生活で新たな発見はないのかとか!」
「要するにすげぇー変わってたんだろ?」
ユウヤに言われると心外!
「というか、何故あたしは自分のことを話したんだ?
すごくトップシークレットなのに!!
知ってる人なんてこの手数えるほどぐらいしか
居ないっていうのに・・・」
自分のこと話すのとか結構恥ずかしいじゃん。
あんまり話したことすらなかったよ。
「でも、日和ちゃんのこと知れて良かったよ。
夏休みはかき氷食べに行こうね。」
馨君!!
もう大好きですよ。
「じゃあ、約束ねっ。」
きっと、一緒に食べたら美味しいんだろうな。
オレンジ色のかき氷が恋しい。
空っぽになったかき氷の器を見つめる。