その後父さんが今までどこで何をしていた
のか聞かされた時は驚いた。
『今年こそは一緒に食べたかったんだよ。』
『だからって、オレンジ畑探すかよ~』
兄ちゃんも呆れるぐらいだ。
父さんの突拍子もない考えは危ない。
『ポンジュースでも良かったんじゃない?』
お兄ちゃんの言葉に父さんがムスッとした。
『ひーちゃんには父さんが絞ったヤツを
食べさせたかったんです。』
父さんはリュックからオレンジ色の液体が
入った瓶を取り出した。
『さすがにどこも収穫終わってるから探すの
大変だったよ。』
12月~7月がオレンジの収穫だ。
8月の今はちょうど終わった頃。
『ひーちゃんの笑顔が見たかったから、
父さん頑張って取りに行ったけど、すっかり
祭りに間に合わなかったとか失敗したな。』
一生懸命だったんだよね。
かき氷そんなに一緒に食べたかったんだね?
ごめんね、我儘言わなきゃ良かったね。
『今年は絶対に一緒に食べたかったんだもん。』
あたしだって今年は一緒に食べる予定だったよ。
レモンで手を打ってあげようと思ってた。
『ひーちゃんの願いを叶えたかったんだ。
父さんはひーちゃんのためなら何だって
出来るってことを改めて知った!』
こっちだって、ビックリしたよ。
『泣かせたじゃねぇか!!』
兄ちゃん、そんなにショックだったの?
『・・・・なっ。父さん、1人空回りで
ひーちゃんを泣かせちゃったな。
すごく反省した。』
そんな父さんの哀愁漂う背中に抱きついた。
『父さん、ありがとう。
日和のために考えて頑張ってくれたの
知らなかったから拗ねてごめんね?』
父さんは急に笑顔になって頷いた。