『見て見て、ひーちゃん。
あっちに、たこ焼き屋さんあるよ。
あのお兄さんは怖そうだけどタコみたいな
頭してるなっ!!』
『大きな声で言っちゃ駄目だよ!!」
『でも、似てるぞ?』
『聞こえたら父さんの命に関わるよ。』
肩車しながらはしゃぐ父さんを見てると
胸いっぱいになった。
『ひーちゃんは何が食べたい?
父さんは、あの焼きそばがいいな。
わたあめも買っちゃうか。
後ね、あのかき氷も食べたいな。』
とにかく、片っ端から出店に立ち寄った。
それから、あんまり人が居ない神社に移動して
花火を見たっけ?
『ほら、ひーちゃん貸してごらん?』
小さな手じゃラムネの蓋は中々開かなかった。
何でも自分でやれるようにしてたけどこればっかり
は父さんにやってもらわなきゃならなかった。
『父さんはあたしと来るの好き?』
本当は母さんと来たかったのかなって
ずっと思ってた。
母さんはいつから海外にお仕事してたんだっけ?
小さい頃の記憶はあまりにも曖昧だ。
6歳だったあたしは母さんが居なくて寂しいと
思ったことはちっともなかった。
母さんはみんなのために働いてるんだって思った。
それに、寂しい思いしないようにって父さんも
兄ちゃんもお兄ちゃんも居てくれた。
母さんはたまに日本に帰って来てくれた。
会えない分は電話してお話した。
でも、父さんは母さん大好きだったから
寂しいと思ったりするのかなって思った。
父さんは母さんにベタ惚れだった。
『ひーちゃんと一緒に来るの好きに決まってるよ。
ひーちゃんは増々みーちゃんに似てきたかな?
気が強い子になちゃったもんな。
父さんは今から心配だよ。
いつまで一緒に祭りに来れるかなって。』
そんな心配しなくていいのに。